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Netflix「愛してるって言っておくね」を見るべきである理由。ネタバレ&感想 

映画『トイストーリー4』の原案を書いたセレステジェシーと、脚本家マイケル・ゴビア監督『愛してるって言っておくね』(2000)。 アメリカの学校で起こった銃撃事件に愛娘を奪われた夫婦の悲しみと虚無感、そして希望へと導かれていくまでの心のうつり変わりを描いた、短編2Dアニメーション。 仕事や他の趣味で疲れていて、あまり映画を観る時間がなく、ようやく見ることができました!

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「愛してるって言っておくね」あらすじ

2018年、アメリカのフロリダ州で起きたマージョリー・ストーンマン・ダグラス高校銃乱射事件をモデルにした本作は、「12分という短い時間」でありながら、「遺族が抱える悲しみと深い傷」を見事に表現していた。 120分の映画を観るのが苦手という人でも、このアニメーションなら手軽に観ることができます。

鉛筆タッチの荒いドローイングは、まさに夫婦の「心のうつり変わり」を表現するのにピッタリです。 実際の被害者をインタビューし、当時の様子をカメラを通して語るより、「手描きのアニメーションだからこそ、人のこころに訴えるものがある」。そんな風にも感じました。 アニメーションと同時に流れる、どこか物悲しい音楽は、見ている人の感情を揺さぶりますね。 その先進的な表現方法が絶賛され、93回アカデミー賞では「短編アニメーション賞」を受賞しました。

愛してるって言っておくね 監督

監督ウィル・マコーマックは『トイ・ストーリー4』の原案を務めています。 ウィルとゴヴィアは、1年かけて本作の脚本を製作した。2018年にアニメーション製作が始まり、アニメーション監督としてヤングラン・ノーを抜擢しました。

『愛してると言っておくね』ストーリーとネタバレ

とあるアメリカの一軒家。名もない夫婦は暗い部屋で、向かい合わせで食事をとっています。 顔には表情がなく、目はうつろな夫婦に、会話はありません。だがその背景には、2人のシルエットが激しく口論している姿が映しだされています。 妻は機嫌を伺うように、ミートボールを夫に差し出します。だが夫はミートボールに目もくれず、その場を立ち去ってしまいます。 f:id:cheeeeeez:20210728134458j:plain 外に出た夫は、家の壁に塗られた青いペンキの跡を見て、涙を流します。夫の影は、まるで慰めるようにペンキの跡を包み込みます。 一方、洗濯物を干していた妻は、洗濯機から娘のユニフォームを取り出しました。娘のことを思い出した妻は、また涙を流します。その時、洗濯機の上からサッカーボールが落ちてきます。 飼い猫である黒猫がそれを追うと、やがてサッカーボールはある一室に入っていき、床に置かれていたレコードプレイヤーにぶつかります。 レコードプレイヤーからは「King princess」の『1950』が流れます。この曲をきっかけに、夫婦は娘の楽しかった日々を思い出します

以下、本作のネタバレ

娘は元気活発な子供だった。母の作るミートボールスパゲッティが好物で、2人にいつも笑顔を振りまいていました。 父とはよく庭でサッカーをしていて、壁に傷をつけてしまうこともありました。そんな娘は、最後に学校に行くときも、笑顔を忘れませんでした。 楽しそうに学校に向かう娘の跡を、夫婦の影は「いかないで」というように追います。 しかし影は娘をすり抜けてしまいます。影は泣きながら、お互いを抱きしめ、消えていきます。 そして運命の次のシーン。学校に銃声が鳴り響きます。 夫婦は悲しみに明け暮れ、互いに別れを告げるように、背を向けます。 死んだ娘の影は、2人を引き止めようと、地面を握りつぶし、2人を手元に近づけます。娘の影は、「黄色い太陽」に姿を変え、夫婦は娘の太陽に照らされながら、前を向き、これからの未来を見つめ始めます。

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「愛してると言っておくね」キャスト

本作は吹き替えが一切ありません。ですが総監督指揮として『スターウォーズ/最後のジェダイ』『マリッジ・ストーリー』『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』のローラ・ダーンが関わっています。 f:id:cheeeeeez:20210728134249j:plain

『愛してると言っておくね』制作秘話

本作は岸辺のふたり(原題:「Father and daughter」(2000)』という映画の影響を受けているそうです。 『岸辺のふたり』は戦争で父を亡くした娘の話です。 モノクロスケッチ、そしてどことなく哀愁漂う音楽など、本作を連想させる要素がいくつかあるのも見どころです。 f:id:cheeeeeez:20210728134839j:plain

「愛してると言っておくね」のレビュー 映像ではなく、手描きのイラストレーションで伝える表現法には驚かされました。

アートディレクターのヤングラン・ノーは『愛してると言っておくね』のインタビューで、このように語っていました。

Because the film is really vulnerable and raw-feeling, I also wanted to make it look very raw and somehow unfinished, just like sketches,” she said (この映画はとても素晴らしいけど、とても深い悲しみも含まれている。だから私は悲しみ、心のうつろいを「未完成なスケッチのように」表現したかったの)

彼女の言うように、このアニメーションは完璧に色塗りされていない、単調な鉛筆のストロークで表現されています。 その鉛筆の動きが、そのままキャラクターの心情の変化を表しているようで、色々考えさせられました。 大切な子供を失った悲しみ、虚無感が悲痛の叫びとなって、映像を通し、視聴者に訴えかけてきます。 視聴していた私も、最初は覚悟していたんですが、学校のシーンで思わずウルっときてしまいました。そして両親に感謝しようと思いました。(大切に育ててくれてありがとう…両親…。)

この映画が伝えたいメッセージは、拳銃の恐ろしさではなく、家族の愛を普段から意識し、伝え合おうということなんだと私は思いました。

日本でも銃撃事件や無差別殺人事件がたまにニュースになりますが、その度に胸が痛みます。 少しでもこのような悲しい事件が起こらないことを願うばかりです。

ここまで読んでいただき、ありがとうございました! 普段は映画やドラマのことを記事にしています。https://cheeeeeez.hatenablog.com/archive