【映画】レディーバード 感想&考察 ネタバレ
暑くなったり寒くなったり、季節が定まらない季節が続いていますね。
今日はネットフリックスのオリジナル映画「レディーバード」のネタバレ・感想を書いていきたいと思います。
レディーバード(2017)
レディーバード
あらすじ
『20センチュリー・ウーマン』のグレタ・ガーウィグ監督が、自伝的要素を織り込みオリジナル脚本で仕上げた単独監督デビュー作。悩める17歳の少女の揺れ動く心情を、みずみずしく、ユーモアたっぷりに描く。『ブルックリン』のシアーシャ・ローナンが、ピンクの髪とガーリーなファッションで痛々しくも愛すべきティーンエイジャーを熱演する。
キャスト
シアーシャ・ローナン ローリー・メトーガフ トレイシー・レッツ ルーカス・ヘッジズ ティモシー・シャラメ
予告https://youtu.be/yBJdLBn8d5k
本作は、ゴールデングローブ賞作品賞、主演女優賞、インディペンデントスピリット賞、ニューヨーク映画批評家協会賞と、多くの賞を獲得しています。
シアーシャ・ローナンはストーリー・オブ・マイライフやブルックリンに出演している、アイルランドの女優さんです。
(引用 Wikipedia)
本作ではピンク色の髪とナチュラルメイク、高校生らしいファッションで主人公に挑んでいます。
A24スタジオといえば「ムーンライト」「ミッドサマー」「ゴースト」「スイスアーミーマン」など、映像美と落ち着いた寂しげな雰囲気、そこに見出される遊び心がある作品がいくつかありますね。
先程の子話に戻るのですが、静かに映画が観たい、ちょっと悲しい時に観るようにしています💔
ミッドサマーがなかなか斬新で面白い作品だったので、最近A24作品に注目しています。
A24といえば拘りのあるアスペクト比ですよね…!
アリアスター監督の「ヘレディタリー(継承)」も気にはなっているんですが、周りの感想が笑顔で大丈夫大丈夫!!観て!!めっちゃ怖いから!!という、無垢な未視聴者を油断して突き落としてやろうという強い志気を感じます…。
監督は「20センチュリーウーマン」のグレタ・ガーヴィク。
「20センチュリーウーマン」を未視聴だったため、この監督の作品を初めて知りました。今後観てみようと思います。
* ストーリー(ネタバレなし)
レディーバードは北カルフォルニアサクラメントに住む、17歳の高校生。カトリック系に通っています。 レディーバードという名前は本人が自称している偽名で、本名はクリスティンといいます。 「クリスティン」と呼ばれることを嫌い、「あたしのことはレディーバードって呼んで」と言う主人公の表情には、どこか謎の自信があるのです。
そんなレディーバードの鮮やかな夢とは裏腹に、あまり裕福な家系ではなく、少し小さめの家に2人の兄弟(長男は求職中)、うつ病の父(彼も求職者です)、精神科医の母親と暮らしていました。
レディーバードが夢を語るたびに、母は「テロの事件以来、あなたのことが心配でわざわざ高い学費を払って通わせてる。うちにはあまりお金がないんだから、馬鹿な夢を見ていないで地元の大学を受けてほしい」と、夢を諦めさせようとします。
そんなレディーバードがいつも一緒にいるのが、友達のジュリー。 数学が得意で、この2人はいつも一緒にいます。
(引用 映画.com)
行きたい大学は都会の大学。必要なのは内申書。 レディーバードは友達のと、演劇のオーディションを受けることになります。
そこで出会ったダニーという青年(ルーカス・ヘッジズ)に、レディーバードは一目惚れをします。
恋に盲目になりがちなレディーバード。主役を勝ち取った親友に「なんであんたが主役?」と嫉妬し、オーディション用紙を偽装し、無理矢理主役を勝ち取り、役を通してダニーと仲良くなります。
そして少しずつ、親友と疎遠になっていきます。
努力が実り無事付き合うことにはなったものの、実家が裕福でした。
そしてその家は、レディーバードが憧れていた大きな青い家だったのです。
自分の家、恋人の家…レディーバードは嫌でも現実を比較することになります。
その後もレディーバードは自分の恋、自分の夢を確かなものにするため、偽った成績を申請したり、自分の住所を偽ったりと、些細な嘘をつくのですが、その嘘はレディーバードの人間関係、そして母親との亀裂を入れるものになっていくのです。
* 感想(※以下、ネタバレあり)
私はこの映画を観て最初30分くらいは、「主人公が嘘つきだし反抗期で、なんだかイライラする…」でした。(すみません…)
嘘が苦手なタイプだからです。
イライラして30分くらい止めながら観てました。結果、評価が180°変わりました。最後まで観てしまいました。
徐々に引き込まれていき、ラストには「この映画に出会ってよかったと思いました。
強烈に美しい作品です…若い少女の愛、偽り、誠実さ…色んな感情が引っ張られるような作品でした。
特に若い女性に見て欲しいです。
以下、まとめた感想。
①ティーンエイジャーであることの自由さと不自由さ
主人公のレディーバードは自身が住む街サクラメントを、ストーリー序盤ではあまりいい印象を持っていないようでした。
ラストになると、その印象は変わることになるのですが…。
気になったので、サクラメントという街を調べてみました。
(出典 Wikipedia)
自然豊かでリフレッシュできそうなところですね!
その分栄えているかと言われればそうでもなく、高校時代のレディーバードにとっては物足りなかったのかもしれません。
また、田舎あるあるとして、人に言っても「どこそれ?」って言われてしまうことも…。
作中でもそのようなシーンがありました。
ラストのシーンでバーで出会った男性と、レディーバードの会話にこんなシーンがありました。
「君はどこ出身なの?」 「サクラメント」 「サ…何?」 「…サンフランシスコ」 「あぁ、サンフランシスコか!いいよね、サンフランシスコって…」 「(はぁ…)」
これ、田舎住みにとってあるあるですよね〜。
私は田舎に住んでいるので、わかるな〜と思いながらこのシーンを見ていました。
主人公は自分の街について論文にしたため、シスターに高評価されるのですが、そんなシスターにレディーバードは、「と皮肉っぽいところを言ってしまうところが、素直になれない(大人になれない)少女を表していますね。
②女子(特に思春期)の間では、周りに馴染まなくてはならないという強迫観念
私は私立の女子高に通っていたので、この気持ちもよくわかります。
人気な女子に取り入ろうと、一生懸命表情筋を動かして、自虐ギャグなんて言ったりして。
でも人気女子の反応は、「へー、そうなんだ笑」みたいな。切ないですよね…。
③作品の後半から登場する、親友の定義
②でも語りましたがレディーバードとは別の立ち位置として登場する人気女子、ジェンナ。
ブルーバードは恋人だったダニーと別れ、別の男子カイルを好きになるのですが、その男子に近づくためにに取り入ろうとします。
結果、ジェミーとは付き合わなくなり、ジェンナと付き合うようになり、レディーバードの学校に対する反抗心も、過激になっていきます。
ジェンナは自宅のプールをレディーバードと泳ぎながら、「田舎が好き」「自分は母親になりたい」と語ります。
そんな彼女に疑問を抱くレディーバード。
また、ジェンナとレディーバードは、色違いのリボンをつけていても全く違う立ち位置にあることが見て取れます。
赤のリボンをつけたレディーバードとは対局の存在にいる青のリボン。
これは、2人が同じ場所にいるように見えて、性質は対局の場所にいることを表しているのかもしれません。
ジェンナは自分を持っている、周りに振り回されにくい子、それに対してレディーバードは、振り回されやすい子だった、ということです。
好きでもない演劇に入る、かっこいい男の子に目移りしてしまう、綺麗な家が好き…そんな言動とは裏腹に、レディーバードという美しく女性らしい、非凡的な存在に、彼女はなりたがっている。
そのどこか不安定なところが、思春期の彼女らしいところなのです。
親友と恋人、この二人の役者さんの、レディーバードに対する素っ気なさ感が絶妙でした。
ジェミーのキャラクターも、勉強ができ、歌も上手、頭のいい子です。
だからこそ、レディーバードが迷走した時には彼女の目には愚かに見えてしまったのかもしれませんね。
しかしプロムの日にレディーバードが選んだのは、自分の意見を否定してくる偽りの恋人よりも、自分のことを受け入れ共感してくれるだった、
というのがとても感動させられますよね。
本当の親友とは、本当の恋人とは何か、この映画を通して深く考えさせられたと思います。
④思春期で夢みがちの娘を支える親はどうあるべきか
この映画の一番の見どころは、レディーバードとレディーバードの母親、とのコミュニケーションです。
レディーバードは、今の現状に何処となく不満を感じていました。 田舎を抜け出し、都会で生活すれば、自然と何もかもうまくいき、彼氏もできる……そんな幻想を抱いていたのかもしれません。
作中のレディーバードは、保身のために友達や先生に嘘をつくことで、自分を辛うじて保っていました。
忙しい中洗濯物に注意してくる母親に対して、素直になることができずにいました。
しかし作中であることをきっかけに、彼女の気持ちは次第に変わっていくことになります。
「あなたにいくらお金を注いできたと思っているの」 「そんなの頼んだ覚えないし!」
母親vs娘の親子喧嘩で、よくある光景ですよね…。
カッとなったレディーバードが紙とペンを取り出し、「じゃあいくらなの?私にお母さん達はいくらかかったの?私が都会に出て働いたら全部返すから!」と言った後、表情を変えない母親に怒り、紙とペンを叩き落とすシーンは、視聴者の心に突き刺さるはずです。
子育てにはお金が必要なのか、愛が必要なのか?
この物語に分かりやすい答えがあるかは、見た人見た人によって違うのかもしれません。
私はローリー・メトーガフといえばビッグバンセオリー のシェルドンの母親、というイメージがあったので、ローリーが演じる母親像を比べて見るのも面白いかもしれませんね!
(引用 https://mobile.twitter.com/PromipoolCOM/status/1163144281969836032/photo/1)
- 最後に
1.思春期を過ぎていくためにどうあるべきか
最初に「解決しないモヤモヤが募る」と話しましたが、正に青春って答えがないんですよね。 大学も就職も、自分で決めていかなくちゃいけない。 若者が自立する傾向にあるアメリカなら、尚更その不安は強いと思います。 若者のそんな不安、あるいは成人の我々がかつて抱いていた不安をもう一度呼び起こし、再び寄り添ってくれるような作品なのではないでしょうか。
2. 母親の愛
レディーバードが前を向いてばかりいるだけで、本当はレディーバードはとても愛されているんですよね。
無償の母親の愛、父親の愛、兄弟の愛、親友達からの愛。
愛の存在を実証化するには、愛を与えるだけでなく、本人が自覚する必要も時にはあるのかもしれません。
その愛をレディーバードはどう受け止め、表現していくのか。
その続きは是非、映画を見てほしいと思います。